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いきなり多次元の問題にすると、イメージを掴みにくい。とりあえず、1次元の問題について考える。
について積分演算子
を次のように定義する。
ここで、ルーベルグ積分の定義から、
と置けることに注意しよう。
これを用いると、
つまり、
が成り立つ。よって積分演算子は有界□
として、
とすると、
よってを積分した関数は
のHolder連続である。
空間は連続関数を
ノルムで完備化したものである。それゆえに一般的に微分可能とは限らない。ここで、微分の概念を一般化した、弱微分を導入する。
に関して、
が成り立つ場合、は
の弱微分と呼ばれる。
が連続関数であるとする。このとき、積分はリーマン積分となるので、
の(弱微分ではない)微分が可能であり、
となる。微分が連続であるからであることが分かる。
よってについて
の微分のリーマン積分が可能であり、
よって、
が成り立つ。よっての弱微分もまた
である。□
について、弱微分を用いて
となる。
空間は
を
ノルムについて完備化したものだった。
については、前の証明より弱微分と強い微分は等しい。そこで積分作用素
の連続性と
が
で稠密であることを用いて、これを
について拡張する。
をノルム
における任意のCauchy列であるとする。
空間は
空間を完備化したものだったから、
は
内に極限
を持つ
積分演算子の有界性から、
よって
となる。
よって
とすると、
が成り立つ。
つまりの弱微分は
である。□
弱微分が0であるから、
が成り立つ。よって、上が成り立つようなは定数であることを示せばよい。
まず、が次のような定数
であると予測を立てる。
この定数は
が成り立つ
題意を満たすためにはが0であることを示せばよい。証明の方針としては、
が任意の連続関数と直交することを示した後、連続関数の空間が
関数の空間で稠密であることを利用して、任意の
関数と直交することを示す。全ての
関数と直交する
関数は0である。ので
がいえる。
さて、を任意の連続関数としよう。この時、
は関数であり、その微分は
である。
よって任意の連続関数とは直交することがわかる。
さて、連続関数は空間の中で稠密であったから、任意の
に対して、
に収束する連続関数のCauchy列
が存在する。
よって右辺はいくらでも小さくできるので、が成り立つ。
よってが成り立つ。つまり、
、
は定数である。□
の弱微分
が存在して、それらが
空間に含まれるとする。このとき、
で定義されるような内積を持つような空間をソボレフ空間という。
ソボレフ空間の任意の要素は次のように定数
と
を使って次のように書くことができる。
とすると
の弱微分は
であるから、
である。
これを用いて、任意のについて、
の弱微分
であるから、
が成り立つ。
つまりの弱微分は0。
前の問題より、弱微分が0ならば、定数であった。よってあるが存在して、
となる。つまり任意のは、実数
と
を用いて
のように表すことができる。□
関数を積分したものは
のHöler連続であったから、ソボレフ空間の任意の要素もまた
のHöler連続である。
空間が
空間の中で稠密であることを示そう。
任意の関数について、それに収束する関数のCauchy列
があればいい。
さて、任意のの関数
は
のように表すことができた。但し、の弱微分
とすると、
ここで、空間は
空間を完備化したものだから、
に対して,ある連続関数の
ノルムに関するCauchy列
が存在して
となる。ここで、次のような関数列を考える
よってもCauchy列である。さて、
よっては
空間で
に収束する。任意の
に対して、収束するようなCauchy列
が存在するので、
空間は
空間で稠密であるといえる。□
空間内の関数で境界で0となるような値を取る関数が作る部分空間を
とかく。このとき
に対して、弱微分を
のように表すと、
が成り立つ。ここでは領域の大きさ
にのみ依存するパラメータ
任意のに対して、
と表すことができた。を弱微分であるとすると、
となる。
のとき
である。これから、
がいえる。よって、
が成り立つ。また、このとき、
も成り立つ。□
次のような方程式を解くとする。
このままではには2階微分が可能であることが要求され、右辺
によっては解が存在しない場合がある。
さて、上の方程式を直接解く代わりに、次のような方程式を解くことを考える。
但し、、
であるとし、
は
の弱い微分であるとした。右辺がソボレフ空間の内積になっていることに注意されたい。
ここで、は次で定義される
の線形関数であるとする。
これを用いて書き換えると
のようになる。
であるからは
空間で有界関数である。よってReiezの定理より解
が存在して唯一定まる。
距離空間、ノルム、線形写像、直和、零空間、作用素、ヒルベルト空間、完備、バナッハ空間
Functional Analysis | Kosaku Yosida 著 |
Functional Analysis in Applied Mathematics and Engineering | Michael Pedersen 著 |
ヒルベルト空間論 | 保江邦夫 著 |