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basis of Sobolev Space

basis of Sobolev Space

ソボレフ空間の基礎




Last Update:2008年01月26日


目次

一次元の場合

いきなり多次元の問題にすると、イメージを掴みにくい。とりあえず、1次元の問題について考える。

積分演算子

f\in L^2[a,b]について積分演算子Jを次のように定義する。

(Jf)(t)=\int_a^t f(x) dx

積分演算子は有界

ここで、ルーベルグ積分の定義から、

\int_a^t f dx=\int_a^b 1_{(a,t)}(x)f(x) dx

と置けることに注意しよう。

|Jf(t)|^2=\|\int_a^t f dx\|^2\\\qquad\qquad\qquad = \|\int_a^b 1_{at}(x)f(x) dx\|^2\le \int_a^b |1_{at}(x)|^2dx \int_a^t |f|^2 dx\qquad\qquad(Cauchy-Schwarz)\\\qquad\qquad\qquad=(t-a)||f||^2_{L^2}\le (b-a)||f||^2_{L^2}

これを用いると、

||Jf||^2_{L^2}=\int_a^b|Jf(t)|^2 dt\le \int_a^b (b-a)||f||^2_{L^2} dt=(b-a)^2||f||^2_{L^2}

つまり、

||Jf||_{L^2}\le (b-a)||f||_{L^2}

が成り立つ。よって積分演算子は有界□

L^2を積分した関数のHolder連続性

f\in L^2[a,b]として、a\le x\le y\le bとすると、

|Jf(y)-Jf(x)|=|\int^y_x f(s) ds|\\\qquad\qquad\le \int^y_x |f(s)| ds\le \{\int^y_x |f(s)|^2 ds\}^{\frac{1}{2}}\{\int^y_x 1^2 ds\}^{\frac{1}{2}}\quad\quad(Cauchy-Schwarz)\\\qquad\qquad=\{\int^b_a |f(s)|^2 ds\}^{\frac{1}{2}}(y-x)^{\frac{1}{2}}\le||f||_{L^2}(y-x)^{\frac{1}{2}}

よってL^2[a,b]を積分した関数は\alpha=\frac{1}{2}のHolder連続である。

弱微分

L^2空間は連続関数を||.||^2ノルムで完備化したものである。それゆえに一般的に微分可能とは限らない。ここで、微分の概念を一般化した、弱微分を導入する。

f\in L^2[a,b]に関して、

\int_a^b f'\psi dx=-\int_a^b f\psi'dx\quad\quad\forall\psi\in C_0^1[a,b]

が成り立つ場合、f'fの弱微分と呼ばれる。

連続関数の積分の弱微分は、強い微分と等しい

gが連続関数であるとする。このとき、積分はリーマン積分となるので、Jgの(弱微分ではない)微分が可能であり、

(Jg)'=g\in C[a,b]

となる。微分が連続であるからg\in C^1[a,b]であることが分かる。

よって\forall \psi\in C^1_0についてg\psi\in C^1_0

(Jg\psi)の微分のリーマン積分が可能であり、

\int_a^b\{Jg\psi\}'dx=\[Jg\psi\]_a^b=0\\\quad\quad=\int_a^b (Jg)'\psi dx+\int_a^b (Jg)\psi' dx

よって、

\int_a^b g\psi dx=-\int_a^b (Jg)\psi' dx\qquad\qquad\forall \psi\in C^1_0[a,b]

が成り立つ。よって(Jg)の弱微分もまたgである。□

L^2関数を積分した関数の、弱微分と強い微分は等しい。

f\in L^2[a,b]について、弱微分を用いて

f=(Jf)'

となる。

証明

L^2[a,b]空間はC[a,b]||.||^2ノルムについて完備化したものだった。

f\in C[a,b]については、前の証明より弱微分と強い微分は等しい。そこで積分作用素Jの連続性とCL^2で稠密であることを用いて、これをf\in L^2[a,b]について拡張する。


f_n\in C[a,b]をノルム||.||_{L^2}における任意のCauchy列であるとする。L^2空間はC空間を完備化したものだったから、f_nL^2[a,b]内に極限fを持つ

\lim_{n\rightarrow\infty}||f_n-f||_{L^2}=0

積分演算子の有界性から、

||Jf_n-Jf||_{L^2}=||J(f_n-f)||_{L^2}\le (b-a)||f_n-f||_{L^2}

よって

\lim_{n\rightarrow\infty}||Jf_n-Jf||_{L^2}=0

となる。

|<f,\psi>+<Jf,\psi'>|=|<f,\psi>-<f_n,\psi>-<Jf_n,\psi'>+<Jf,\psi'>|\\\qquad\qquad\qquad\le|<f,\psi>-<f_n,\psi>|+|<Jf_n,\psi'>-<Jf,\psi'>|\\\qquad\qquad\qquad=|<f-f_n,\psi>|+|<Jf_n-Jf,\psi'>|\\\qquad\qquad\qquad\le||f-f_n||\cdot||\psi||+||Jf_n-Jf||\cdot||\psi'||

よって

n\rightarrow\inftyとすると、<f,\psi>=-<Jf,\psi'>が成り立つ。

つまり(Jf)の弱微分はfである。□

弱微分が0なら定数

弱微分が0であるから、

\int_a^b f\psi' ds=0\quad\forall \psi\in C^1_0[a,b]

が成り立つ。よって、上が成り立つようなf\in L^2は定数であることを示せばよい。

まず、fが次のような定数c\in Rであると予測を立てる。

c=\frac{1}{(b-a)}\int_a^b f\cdot 1dx

この定数c<f-c1,1>=0が成り立つ

題意を満たすためにはf-c1が0であることを示せばよい。証明の方針としては、f-c1\in L^2が任意の連続関数と直交することを示した後、連続関数の空間がL^2関数の空間で稠密であることを利用して、任意のL^2関数と直交することを示す。全てのL^2関数と直交するL^2関数は0である。のでf-c1=0\rightarrow f=c1がいえる。


さて、gを任意の連続関数としよう。この時、

G(t)=\frac{g(b)-g(a)}{b-a}(t-a)+g(a)-\int_a^t g(t)dt

C^1_0[a,b]関数であり、その微分はG(t)'=\frac{g(b)-g(a)}{b-a}-g(t)である。

<f-c1,G'>=0\quad\leftrightarrow\quad<f-c1,\quad\frac{g(b)-g(a)}{b-a}-g>=0\quad\leftrightarrow\quad <f-c1,g>=\frac{g(b)-g(a)}{b-a}<f-c1,1>=0

よって任意の連続関数とf-c1は直交することがわかる。


さて、連続関数はL^2空間の中で稠密であったから、任意のh\in L^2[a,b]に対して、hに収束する連続関数のCauchy列h_n\in C[a,b]が存在する。

|<f-c1,h>|=|<f-c1,h_n-h_n+h>|\le|<f-c1,h_n>|+|<f-c1,h-h_n>|\\\qquad\qquad =|<f-c1,h-h_n>|\quad\quad(h_n\in C)\\\qquad\qquad\le||f-c1||\cdot||h-h_n||

よって右辺はいくらでも小さくできるので、<f-c1,h>=0が成り立つ。

f-c1\in L^2\cap {L^2}^\bot=\{0\}

よってf-c1=0が成り立つ。つまり、f=c1fは定数である。□

ソボレフ空間

f,g\in L^2の弱微分f',g'が存在して、それらがL^2空間に含まれるとする。このとき、

(f,g)_{H^1}=(f,g)_{L^2}+(f',g')_{L^2}

で定義されるような内積を持つような空間をソボレフ空間という。

積分演算子を使ったソボレフ空間の表現

ソボレフ空間の任意の要素g\in H^1[a,b]は次のように定数cf\in L^2[a,b]を使って次のように書くことができる。

g=c+Jf

証明

f\in L^2とすると(Jf)の弱微分はf\in L^2であるから、Jf\in H^1である。

これを用いて、任意のg\in H^1について、gの弱微分g'\in L^2であるから、(Jg')'=g'が成り立つ。

つまり(Jg')-gの弱微分は0。

前の問題より、弱微分が0ならば、定数であった。よってあるc\in Rが存在して、

(Jg')-g=c1

となる。つまり任意のg\in H^1は、実数c\in Rf\in L^2[a,b]を用いて

g=c1+Jf

のように表すことができる。□

ソボレフ空間内の関数の連続性

L^2[a,b]関数を積分したものは\alpha=\frac{1}{2}のHöler連続であったから、ソボレフ空間の任意の要素もまた\alpha=\frac{1}{2}のHöler連続である。

C^1空間はH^1空間の中で稠密

C^1[a,b]空間がH^1[a,b]空間の中で稠密であることを示そう。

任意の関数g\in H^1[a,b]について、それに収束する関数のCauchy列g_n\in C^1[a,b]があればいい。

さて、任意のH^1の関数g

g=c1+Jf,\quad (c\in R, \quad f\in L^2)

のように表すことができた。但し、gの弱微分g'とすると、

f=g'\qquad\qquad c1=g-Jf

ここで、L^2空間はC空間を完備化したものだから、f\in L^2に対して,ある連続関数のL^2ノルムに関するCauchy列f_n\in Cが存在して

\lim_{n\rightarrow\infty}||f-f_n||_{L^2}=0

となる。ここで、次のような関数列g_n\in C^1[a,b]を考える

g_n=c1+Jf_n

||g_n-g_m||^2_{H^1}=||g_n-g_m||^2_{L^2}+||g_n'-g_m'||^2_{L^2}=||Jf_n-Jf_m||^2_{L^2}+||f_n-f_m||^2_{L^2}\le \{(b-a)^2+1\}||f_n-f_m||^2_{L^2}

よってg_nもCauchy列である。さて、

||g_n-g||^2_{H^1}=||g_n-g||^2_{L^2}+||g_n'-g'||^2_{L^2}=||Jf_n-Jf||^2_{L^2}+||f_n-f||^2_{L^2}\le \{(b-a)^2+1\}||f_n-f||^2_{L^2}

よってg_nH^1空間でgに収束する。任意のg\in H^1に対して、収束するようなCauchy列g_n\in C^1が存在するので、C^1空間はH^1空間で稠密であるといえる。□

ポアンカレの不等式

H^1空間内の関数で境界で0となるような値を取る関数が作る部分空間をH^1_0とかく。このとき\forall g\in H^1_0に対して、弱微分をg'のように表すと、

||g'||_{L^2}\ge C||g||_{L^2}

が成り立つ。ここでCは領域の大きさ(b-a)にのみ依存するパラメータ

証明

任意のg\in H^1に対して、

g=c1+Jf,\quad (c\in R, \quad f\in L^2)

と表すことができた。g'を弱微分であるとすると、g'=(Jf)'=fとなる。

g\in H^1_0のときg(a)=g(b)=0である。これから、

c=0,\quad\quad Jf(b)=\int_a^b f(x) dx=0

がいえる。よって、

||g'||_{L^2}=||f||_{L^2}\ge \frac{1}{b-a}||Jf||_{L^2}=\frac{1}{b-a}||g||_{L^2}

が成り立つ。また、このとき、

||g||_{H^1}\ge (1+\frac{1}{b-a}) ||g||_{L^2}

も成り立つ。□

Riezの表現定理による微分方程式の解の一意存在性

次のような方程式を解くとする。

\{\begin{array}{l}-y''+y=f\\y(a)=y(b)=0\end{array}

このままではyには2階微分が可能であることが要求され、右辺fによっては解が存在しない場合がある。

さて、上の方程式を直接解く代わりに、次のような方程式を解くことを考える。

\int_a^b y'(x)v'(x)+y(x)v(x) dx=\int_a^b f(x) v(x) dx\quad\forall v\in H^1_0

但し、f\in L^2y\in H^1_0であるとし、v',y'v,yの弱い微分であるとした。右辺がソボレフ空間の内積になっていることに注意されたい。

ここで、\phiは次で定義される\phi:L^2\rightarrow Rの線形関数であるとする。

\phi(v)=\int_a^b f(x)v(x) dx

これを用いて書き換えると

(y,v)_{H^1}=\phi(v)\quad\forall v\in H^1_0

のようになる。

|\phi(v)|=\|\int_a^b f(x)v(x)\| dx\le ||v||_{L^2}||f||_{L^2}\le (1+\frac{1}{b-a})^{-1}||f||_{L^2} ||v||_{H^1}

であるから\phiH^1_0空間で有界関数である。よってReiezの定理より解y\in H^1_0が存在して唯一定まる。

参考にしたもの

Wikipedia

距離空間ノルム線形写像直和零空間作用素ヒルベルト空間完備バナッハ空間

Link

Online Mathematics Texts -オンライン数学テキスト-
http://homepage2.nifty.com/masema/index.html
解析についてのwebノート
http://www.ne.jp/asahi/search-center/internationalrelation/mathWeb/index.htm
線形作用素
http://forum.shimozono.net/room1/package/hilbert-space3.htm
有界線形汎関数
http://www.fbc.keio.ac.jp/~hkomiya/education/lecture/normed-space-2005-3.pdf
線形代数
http://schubert.cs.shinshu-u.ac.jp/~miyao/UD/Subjects/Linear/index.html
金沢大学、小俣正朗先生、2007年度 中央大学 集中講義 『応用解析特別講義第二』
http://polaris.s.kanazawa-u.ac.jp/chuou/chuou.pdf
関数解析U
http://www.math.meiji.ac.jp/~mk/labo/text/functional-analysis-2.pdf
関数解析V
http://www.math.meiji.ac.jp/~mk/labo/text/functional-analysis-3.pdf

Book

Functional Analysis Kosaku Yosida 著
Functional Analysis in Applied Mathematics and Engineering Michael Pedersen 著
ヒルベルト空間論 保江邦夫 著


Made by Nobuyuki UMETANI  梅谷 信行
n.umetani@gmail.com