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Spectrum and Eigenvalue

Spectrum and Eigenvalue

スペクトルと固有値




Last Update:2008年01月26日


目次

有界線形作用素のスペクトル

レゾルベント集合
A\in BL(E,E)に対して、次の(I)(II)の性質を持つ\lambda\in \cal{C}の集合をレゾルベント集合といい、\rho(A)と表す。
(I) A-\lambda Idが可逆
(II) (A-\lambda Id)^{-1}が有界
スペクトル
\cal{C}のうちレゾルベント集合に入らないものをスペクトルといい、\sigma(A)と表す。
固有値(eigenvalue)
線形作用素A:E\rightarrow Eについて、次のような、\lambda\in \cal{C}f\in E,f\ne 0が存在するとき、\lambdaAの固有値と呼ばれる
   A(f)=\lambda f
また、このようなfは固有ベクトル、固有関数などと呼ばれる。

スペクトルと固有値

Eがノルム空間とし、作用素A:E\rightarrow Eが線形であるとすると、全ての固有値はスペクトル\sigma(A)に含まれる。

有限次元空間における固有値とスペクトル

Eが有限次元ノルム空間であり、作用素A:E\rightarrow Eが線形だとすると、スペクトル\sigma(A)と固有値の集合は等しい。

スペクトルは閉空間

Eがバナッハ空間であり、A\in BL(E,E)であるとする。

レゾンベルト集合\rho(A)が開空間であることを示す。

\lambda\in\rho(A)として、全ての

|\lambda-\mu|<\frac{1}{||(A-\lambda Id)^{-1}||}

を満たす\mu\in Cは、\mu\in\rho(A)であることを示す。

バナッハ空間においては\mu\in\rho(A)であるためには、A-\mu Idが可逆であることを示せばよい。

A-\mu Id=A-\lambda Id-(\mu-\lambda)Id=\(Id-(\mu-\lambda)(A-\lambda Id)^{-1}\)(A-\lambda Id)

ここで、B=(\mu-\lambda)(A-\lambda Id)^{-1}とおく。

||B||=|\mu-\lambda|\cdot||(A-\lambda Id)^{-1}||<1

よってId-(\mu-\lambda)(A-\lambda Id)^{-1}=Id-Bは可逆。A-\lambda Idは可逆であったから、A-\mu Idも可逆であり、

(A-\mu Id)^{-1}=(A-\lambda Id)^{-1}(Id-B)^{-1}

が成り立つ。よって補空間が開空間であるからスペクトルは閉空間である。□

スペクトルは半径が作用素ノルムの閉球の中にある。

\muがスペクトルなら、|\mu|\le ||A||であることを示すためには

|\lambda|>||A||ならば\lambda\in\rho(A)であることを示せばよい。つまりA-\lambda Idが可逆であることを示せばよい。B=\frac{1}{\lambda}Aとおくと、

A-\lambda Id=-\lambda(Id-\frac{1}{\lambda}A)=-\lambda(Id-B)

||B||=\frac{||A||}{|\lambda|}<1よりId-Bは可逆である。よってA-\lambda Idは可逆で

(A-\lambda Id)^{-1}=-\frac{1}{\lambda}(Id-\frac{1}{\lambda}A)^{-1}

となる。以上から\lambda\in \rho(A)となり、題意は証明された。□

自己共役演算子のノルム

もし、A:H\rightarrow Hが自己共役ならば、

||A||=\sup_{||f||=1}|(Af,f)|

となる。

証明

まず、||A||\ge\sup_{||f||=1}|(Af,f)|を示し、次に||A||\le\sup_{||f||=1}|(Af,f)|を示すことで証明する。


||f||=1のとき、|(Af,f)|\le||Af||\cdot||f||\le||A||\cdot||f||^2=||A||

よって||A||\ge\sup_{||f||=1}|(Af,f)|は明らか


次に、M=\sup_{||f||=1}|(Af,f)|とおき、\forall f\in H,||f||=1に対して||A(f)||\le Mを示す。

ここで、g=\frac{A(f)}{||A(f)||}とおくと、

||A(f)||=\frac{1}{||A(f)||} ||A(f)||^2=\frac{1}{||A(f)||}(Af,Af)=(Af,\frac{A(f)}{||A(f)||})=(Af,g)

||A(f)||=\frac{1}{||A(f)||}(f,AAf)=(f,A\frac{A(f)}{||A(f)||})=(f,Ag)

さて、a=\frac{f+g}{2}d=\frac{f-g}{2}と置く。f=a+dg=a-dを上に代入して

||A(f)||=(Af,g)=(A\{a+d\},\{a-d\})=(Aa,a)-(Ad,d)+(Ad,a)-(Aa,d)

||A(f)||=(f,Ag)=(\{a+d\},A\{a-d\})=(Aa,a)-(Ad,d)-(Ad,a)+(Aa,d)

よって、上二式の和を計算して、

||A(f)||=\frac{1}{2}\{(Af,g)+(f,Ag)\}=(Aa,a)-(Ad,d)\le M\{||a||^2+||b||^2\}

が成り立つ。中線定理より、

||\frac{f+g}{2}||^2+||\frac{f-g}{2}||^2=\frac{1}{2}\{||f||^2+||g||^2\}

||a||^2+||b||^2=1

これを上に代入すると

||A(f)||\le M=\sup_{||f||=1}|(Af,f)|

がいえる。


以上から

||A||=\sup_{||f||=1}|(Af,f)|

となる。□

近似固有値
ヒルベルト空間H上の有界線形作用素Aがなんらかの複素数\lambda\in Cと規格化された点列(x_n)\in H,\quad ||x_n||=1に対して
\lim_{n\rightarrow\infty}||(A-\lambda I)x_n||=0
となるとき\lambdaAの近似固有値という

自己共役作用素の近似固有値

自己共役作用素A\lambda=||A||\lambda=-||A||の近似固有値を持つ。

証明

A:H\rightarrow Hとして、ある列f_n\in H,\quad ||f||=1が存在して、\lambda=||A||\lambda=-||A||について、

\lim_{n\rightarrow\infty}(A(f_n)-\lambda f_n)=0

であることを示せばよい。

前の定理より、||A||=\sup_{||f||=1}|(Af,f)|であったから、ある列f_n\in H,\quad ||f_n||=1が存在して、\lim_{n\rightarrow\infty}|(Af_n,f_n)|=||A||とすることができる。

||Af_n-\lambda f_n||^2=(Af_n-\lambda f_n,Af_n-\lambda f_n)\\\qquad\qquad\qquad=||A f_n||^2+\lambda^2||f_n||^2-2\lambda(A f_n,f_n)\\\qquad\qquad\qquad\le||A||^2+\lambda^2-2\lambda(A f_n,f_n)

ここで\lambda=\lim_{n\rightarrow\infty}(Af_n,f_n)=+||A||\quad or\quad -||A|| とおけば、右辺は幾らでも小さくできるので||Af_n-\lambda f_n||\rightarrow = 0となる。

よって題意は証明された□

完全連続な自己共役作用素のスペクトル

完全連続な自己共役作用素の固有値

完全連続な自己共役作用素A:H\rightarrow H\lambda=||A||\lambda=-||A||の固有値を持つ。

証明

前の定理から自己共役作用素A\lambda=||A||\lambda=-||A||の近似固有値を持つことが分かる。つまり、あるf_n\in H,\quad ||f_n||=1が存在して、

\lim_{n\rightarrow\infty}(Af_n-\lambda f_n)=0

となる。Aが完全連続作用素であるので、前の定理よりf_nA f_nが収束する部分列f_{n_k}を含んでいる。さて、ここでf_{n_k}f_nとなるように選びなおす。また、A f_ng\in Hに収束するとする。

||\lambda f_n-g||=||\lambda f_n-A f_n+A f_n-g||\le ||\lambda f_n-A f_n||+||A f_n-g||

であるから

\lim_{n\rightarrow\infty}f_n=\frac{g}{\lambda}

となる。

||\lambda g-A g||=\lim_{n\rightarrow\infty}||\lambda A f_n- A g||\le |\lambda|\cdot||A||\cdot\lim_{n\rightarrow\infty}||f_n-\frac{g}{\lambda}||=0

よってA g=\lambda gとなることから、\lambdaは固有値となる。□

スペクトル分解

Hをヒルベルト空間として、A:H\rightarrow Hを完全連続な自己共役作用素とする。この時、次のような、1次元部分空間への正射影演算子と実数が存在する。

ここで、iは有限な場合も無限な場合もある。つまりi=1,2,\ldotsi\in Nである。

が成り立つ。さらに\lambdaが無限に存在する場合は\lim_{n\rightarrow\infty}\lambda_n=0となる。

上と別の定義

Hをヒルベルト空間として、A:H\rightarrow Hを完全連続な自己共役作用素とすると、固有値\lambda_iと正規完全直交系\{g_i\}が存在して

A(f)=\sum_i\lambda_i(f,g_i)g_i

となる。さらに\lambdaが無限に存在する場合は\lim_{n\rightarrow\infty}\lambda_n=0となる。

完全連続自己共役作用素に対する交代定理

Hをヒルベルト空間として、A:H\rightarrow Hを完全連続な自己共役作用素とする。次のような、gを固定してfを求めるような方程式を考える

(A-\lambda Id)f=g


(a)もし、\lambdaAの固有値でないなら、全てのg\in Hに対して唯一の解fが存在して、次のように与えられる。

f=\sum^{\infty}_{i=1}(\lambda_i-\lambda)^{-1}(g,g_i)g_i

但し、A(f)は、最大正規直交系{g_i}を使って、次のように与えられる。

A(f)=\sum_i\lambda_i^{\infty}(f,g_i)g_i

また、fgに対して連続に与えられる。


(b)もし、\lambdaAの固有値なら、g\bot \cal{N}(A-\lambda Id)の場合に限り、解fは次のように与えられる。

f=f_0+\sum^r_{i=1}\alpha_i f_i

ここでf_0は任意の解で、f_1,f_2,\ldots,f_rは固有値\lambdaに対応する固有値空間E_\lambdaの基底である。

参考にしたもの

Wikipedia

距離空間ノルム線形写像直和零空間作用素ヒルベルト空間完備バナッハ空間

Link

Online Mathematics Texts -オンライン数学テキスト-
http://homepage2.nifty.com/masema/index.html
解析についてのwebノート
http://www.ne.jp/asahi/search-center/internationalrelation/mathWeb/index.htm
線形作用素
http://forum.shimozono.net/room1/package/hilbert-space3.htm
有界線形汎関数
http://www.fbc.keio.ac.jp/~hkomiya/education/lecture/normed-space-2005-3.pdf
線形代数
http://schubert.cs.shinshu-u.ac.jp/~miyao/UD/Subjects/Linear/index.html

Book

Functional Analysis Kosaku Yosida 著
Functional Analysis in Applied Mathematics and Engineering Michael Pedersen 著
ヒルベルト空間論 保江邦夫 著


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n.umetani@gmail.com