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Mathematical basis for FEM

Mathematical basis for FEM

有限要素法の数学的基礎




Last Update:2008年01月26日


目次

変分問題

特徴化定理(Characterrization Theorem)

Vを線形空間として、

a:\quad V\times V\rightarrow \Re

a正定値双線形関数、つまりa(v,v)\gt 0 \quad \forall v\in V\quad v\ne 0が成り立つとする。

またlを線形関数とする

l:\quad V\rightarrow \Re

このとき次の関数Jを次のように定める

J(v)=\frac{1}{2}a(v,v)-<l,v>

lは関数なのでl(v)と書いてもよいのだが、線形性を強調するためにベクトルl\in V'を用いて<l,v>のように書く)

u \in Vとすると、この関数Juにおいて最小値を取るための必要十分条件は次が成り立つことである。

a(u,v)=<l,v> \quad \forall v\in V \qquad\qquad (*)

証明

u,v\in V また t\in \Reに対して以下が成り立つ。

J(u+tv)=\frac{1}{2}a(u+tv,u+tv)-<l,u+tv>\\ \qquad\qquad=J(u)+t\{a(u,v)-<l,v>\}+\frac{1}{2}t^2a(v,v) \qquad\qquad (**)

もしもuが(*)を満たす場合、第二項が0となる。ここでt=1とおくと(**)は次のようになる

J(u+v)=J(u)+\frac{1}{2}a(u,v)\quad \forall v\in V\\ \qquad\qquad \gt J(u) \qquad \forall v\in V v\ne 0

よって(*)が成り立てば、Jは唯一uにおいて最小値をとることがわかる。

反対にJuにおいて最小値を取る場合、(**)のt=0における、tの微分が全ての\forall v\in Vに対して0でなければならないから、

\left.\frac{\partial J(u+tv)}{\partial t} \right|_{t=0}=a(u,v)-<l,v>=0 \quad \forall v\in V

つまり(*)が成り立つ。

The Lax-Milgram Theorem(凸空間に限る)による変分問題の解の存在と一意性

Vを凸で閉じたHirbert空間とし、a:\quad H \times H\right\Reを楕円双線形関数とする。つまりaは有界かつa(v,v)\ge\alpha||v||^2\quad \forall v\in Hが成り立つとする。このとき任意の関数l\in H'について次の変分問題はVの中に解を唯一持つ
\min_{v\in V} J(v)=\frac{1}{2}a(v,v)-<l,v>

証明

次のようにJは下に有界である。

J(v)\ge\frac{1}{2}\alpha||v||^2-||l||\quad||v||=\frac{1}{2\alpha}(\alpha||v||-||l||)^2-\frac{||l||^2}{2\alpha}\ge-\frac{||l||^2}{2\alpha}

そこでJの下限をc_1=\inf\{J(v)|v\in V\}のように定める。また、v_nJ(v_n)が単調減少するようなHの中の数列であるとする。Jは下に有界であったから、J(v_n)c_1に収束する。つまりnを大きくすればJ(v_n)c_1にいくらでも近づく

\alpha||v_n-v_m||^2\le a(v_n-v_m,v_n-v_m)\\ \qquad\qquad\qquad =2a(v_n,v_n)+2a(v_m,v_m)-a(v_n+v_m,v_n+v_m)\\ \qquad\qquad\qquad =4J(v_n)+4J(v_m)-8J(\frac{v_n+v_m}{2})\\ \qquad\qquad\qquad \le4J(v_n)+4J(v_m)-8c_1

最後の変形ではVが凸であるから\frac{v_n+v_m}{2}\in Vであることを用いた。ここでJ(v_n)J(v_m)c_1に収束するので、n,mを大きくすれば、上式はいくらでも0に近づけることができる。

||v_m-v_n||<\epsilon\quad \forall\epsilon>0 \quad\exist N\quad n,m>N

つまりv_nはCauchy列である。よってu=\lim_{n\right\infty}v_nが存在し、Vが閉空間であるからu\in Vである。Jの有界性より、J(u)=\lim_{n\right\infty}J(v_n)=\inf_{v\in V}J(v)である。


さて、Lax-Milgramの補題と特徴化定理により汎関数が最少となるような解の唯一存在性と解を与える方程式を導くことができた。次に実際の問題にこれを応用してみよう。

2次楕円型偏微分方程式と汎関数

次のような2次楕円型の境界値問題を解くとする

\{\begin{array}{r}Lu=\frac{\partial}{\partial x_i}(a_{ik}\frac{\partial u}{\partial x_k})=f\\u=0\end{array} \quad \begin{array}{l} in \quad\Omega \\on \quad\partial\Omega\end{array}

この場合に次の方程式の解は次の汎関数J

J(v)=\frac{1}{2}a(v,v)-(f,v)_0

の境界上で0でありC^2(\Omega)\cap C^0(\bar{\Omega})に含まれる全ての関数の中での最小値である。(但しC^2(\Omega)\cap C^0(\bar{\Omega})は領域の内側で2階微分可能で2階微分連続、かつ境界上で連続な関数の集合)但し、

a(u,v)=\int_{\Omega} \{ a_{ik}\frac{\partial u}{\partial x_i}\frac{\partial v}{\partial x_k}+a_0 uv \} dx

(f,v)_0=\int_{\Omega}fv dx

である。

証明

ここでuを上の楕円型の偏微分方程式の解とする。またvは境界上で0となる任意のv\in C^1(\Omega)\cap C^0(\bar\Omega)とする。

a(u,v)-(f,v)_0=\int_{\Omega}\[ a_{ik}\frac{\partial v}{\partial x_i}\frac{\partial v}{\partial x_k}+a_0 uv-fv \]dx\\\qquad\qquad = \int_{\Omega}\[ \frac{\partial}{\partial x_i}(v a_{ik}\frac{\partial u}{\partial x_k})-v\frac{\partial}{\partial x_i}(a_{ik}\frac{\partial u}{\partial x_k})+a_0 uv-fv \]dx\\\qquad\qquad = \int_{\partial\Omega}n_i(v a_{ik}\frac{\partial u}{\partial x_k})ds+\int_{\Omega}v\[-\frac{\partial}{\partial x_i}(a_{ik}\frac{\partial u}{\partial x_k})+a_0 u-f\]dx\\\qquad\qquad\int_{\Omega}v\[Lu-f\]dx=0

が成り立つ。但し、2番目の式から3番目の式はGreen-Gaussの定理を用いた。従ってuが解ならば境界上でv=0となる任意のv\in C^2(\Omega)\cap C^0(\bar\Omega)について(C^2\subset C^1である)

a(u,v)=(f,v)_0

を満たす。よって特徴化定理よりuが解であることの必要十分条件は

汎関数J(v)=\frac{1}{2}a(v,v)-<f,v>uにおいて全ての境界上で0となるC^2(\Omega)\cap C^0(\bar\Omega)の関数の中での最小値をとることである。


上で示した汎関数J

J(v)=\frac{1}{2}a(v,v)-(f,v)_0

の最小値が上の楕円問題の解となるのは境界上で0となるv\in C^2(\Omega)\cap C^0(\Omega)の関数の中でJが最小値をとる場合である。残念ながら\in C^2(\Omega)\cap C^0(\Omega)では最小値となる解の唯一存在性に必要なaの楕円性を示すことはできない。その代わりにv\in H^1_0(\Omega)で上の汎関数の最小値の唯一存在性を示すことができる。v\in C^2(\Omega)\cap C^0(\Omega)の中での最小値ではなくてv\in H^1_0(\Omega)の中での最小値であるので解は2階微分ができてそれが連続という条件を満たさなくてもよく、より弱い1回微分が2乗可積分であるという条件を満たしさえすればよい。このようなH^1_0の中で汎関数を最少にするような解は解としての条件が弱いことから弱い解(weak solution)と呼ばれる

弱い解の唯一存在性

汎関数J(v)v\in H^1_0(\Omega)の範囲で最小化するような弱解は常に唯一存在し、次の方程式を満たす

a(u,v)=(f,v)_0 \quad \forall v\in H^1_0(\Omega)

これを証明しよう。

証明

aH^1_0における有界性と楕円性をまずしめす。これを示すことができれば、Lax-Milgramの定理から解の唯一存在性がいえる。

c_1は係数a_{ik}の上限とする。つまりc=\sup\{|a_{ik}(x)|;\quad x\in\Omega, \quad1\le i, k\le n\}するとCauchy-Schwarzの定理より

\left|\sum_{i,k}\int a_{ik}\frac{\partial u}{\partial x_i}\frac{\partial v}{\partial x_k}dx\right|\le c_1\sum_{i,k}\int\left|\frac{\partial u}{\partial x_i}\frac{\partial u}{\partial x_k}\right|dx\\ \qquad\qquad\qquad\le c_1\sum_{i,k}\[\int(\frac{\partial u}{\partial x_i})^2dx\int(\frac{\partial u}{\partial x_k})^2dx\]^{1/2}\\ \qquad\qquad\qquad\le c_1n^2|u|_1|v|_1

c_2は係数a_0の上限とする。つまりc=\sup\{|a_0(x)|;\quad x\in\Omega\}このときCauchy-Schwarzの定理より、

\left|\int a_0 u v dx\right|\le c_2\int|uv|dx\le c_2\int u^2dx\int v^2dx=c_2||u||_0||v||_0

C=\max\{c_1,c_2\}とする。また|.|_1<||.||_1かつ||.||_0<||.||_1が成り立つから、

a(u,v)\le C||u||_1||v||_1が成り立つ。つまり、関数aは有界である。

\frac{\partial v}{\partial x_i}<\inftyであるので、次のような\alphaを定めることができる。

\sum_{i,k}a_{ik}\frac{\partial v}{\partial x_i}\frac{\partial v}{\partial x_k}\ge\alpha\sum_i(\frac{\partial v}{\partial x_i})^2

上式を積分して

a(v,v)\ge\alpha\sum_i\int(\frac{\partial v}{\partial x_i})^2dx=\alpha|v|^2_1\qquad \forall v\in H^1(\Omega)

Poincare-Friedrichの不等式よりH^1_0の中では2つのノルム|.|_1||.||_1は同一である。つまり

a(v,v)\ge\alpha||v||_1が成り立つ。前に示したとおり有界性も成り立つので関数aH^1_0内でH^1-楕円双線形関数である。

Lax-Milgramの定理から汎関数の解が一意に存在し、これは特徴化定理からこれは弱い解である。

Ritz-Galerkin法

ある楕円型の境界値問題は、H^m(\Omega)、やH^m_0(\Omega)上で関数Jを最小化するような変分問題を解くことで得られた。計算機上で解を求めたい場合は次元の数が限られているので、ある部分空間の中で汎関数の最小値を求め、それを近似解とする。ここでS_hは離散的な関数空間を表し、有限次元の部分空間であるとする。hは離散化パラメーターである。

次のような変分問題を考える

\min_{v\in S_h}\frac{1}{2}a(v,v)-<l,v>

特徴化定理から

a(u_h,v)=<l,v> \quad \forall v\in S_h \qquad\qquad (*)

u_h\in S_hが上式の解であれば、u_hはこの変分問題の解であるということがいえる。ここで関数\phi_1,\phi_2,\ldots,\phi_NS_hの基底である、つまりS_h=span\{\phi_1,\phi_2,\ldots,\phi_N\}であるとすると、(*)は次に等しい

a(u_h,\phi_i)=<l,\phi_i>\qquad\qquad i=1,\ldots,N

u_h\in S_hであったので

u_h=\sum_{k=1}^N z_k\phi_k

と書くことができる。これを上式に代入して

\sum_{k=1}^N a(\phi_k,\phi_i)z_k=<l,\phi_i>\qquad\qquad i=1,\ldots,N

ここで行列AA_{ik}=a(\phi_k,\phi_i)、ベクトルbb_k=<l,\phi_i>のようにおくと、Az=bの連立一次方程式の形に書くことができる。

Az=bを解くことでzを求め、u_hを求める方法をRitz-Galerkin法と呼ぶ。

Ritz-Galerkin法の解が正解の離散空間へのエネルギーノルムによる正射影であるという性質

Ritz-Galerkin法の解u_hの性質を調べてみよう。ここで正解はuであるとする。

a(u,v)=<l,v> \quad \forall v\in V

Ritz-Galerkin法より

a(u_h,v)=<l,v> \quad \forall v\in S_h\subset V

上式を差し引いて

a(u-u_h,v)=0 \quad \forall v\in S_h

が成り立つ。ここでS_hの線形性により、任意のv_h\in S_hに対してu_h-v_h\in S_hであるから、

a(u-u_h,v_h-u_h)=0 \quad \forall v\in S_h

a(u,v)の正定値性、正規性、線形性、対称性よりこの双線形形式は内積としての性質を持ち、a(u,v)=(u,v)_Aなどと書かれる。またこのノルムから作られるノルム\sqrt{a(v,v)}=||a(v,v)||_Aと書き、これをエネルギーノルムと呼ぶ。Ritz-Galerkin法の解u_h

(u-u_h,v_h-u_h)_A=0\quad\forall v_h\in S_h

を満たす。つまり、正解とRitz-Galerkin法との差はあらゆる離散空間上のベクトルとA内積で直行している。Ritz-Galerkin法は離散空間上への正解のエネルギーノルムによる正射影であるといえる。これはRitz-Projectorと呼ばれる。

特徴化定理よりu_hは正解からのAノルムでの距離の2乗を表す次の関数J

J(v)=(v-u,v-u)_A=||v-u||^2_A

v\in S_hの中で最小化していることがわかる。e=v-uは誤差であるから、Ritz-Galerkin法は誤差のエネルギーノルムを最小化する方法であるといえる。これは誤差最小化原理と呼ばれる。

(ユークリッド空間みたいに表した)Ritz-Galerkin法の解の様子
離散化解u_hは連続解uとの差は離散空間とエネルギーノルムで直交する。
このとき離散解と連続解との差のエネルギーノルムl_1は最小化されている。

Céaの補題

Vを次のような空間だとするH^m_0(\Omega)\subset V\subset H^m(\Omega)ここでaがV-楕円双線形写像であるとする。また、uが空間Vの中の、u_hが空間S_h\subset Vの中における変分問題の解であるとする。このとき
||u-u_h||_m\le \frac{C}{\alpha}\inf_{v_h\in S_h}||u-v_h||_m
が成り立つ。

証明

Ritz-Galerkin法の解u_hは以下のような性質が成り立った。

a(u-u_h,v_h-u_h)=0 \quad \forall v\in S_h

が成り立つ。これを用いて

\alpha||u-u_h||_m^2\le a(u-u_h,u-u_h)=a(u-u_h,u-v_h+v_h-u_h)\\ \qquad \qquad=a(u-u_h,u-v_h)+a(u-u_h,v_h-u_h)=a(u-u_h,u-v_h)\\ \qquad \qquad\le C||u-u_h||_m||u-v_h||_m

両辺を||u-u_h||_mで割って\alpha||u-u_h||_m\le C||u-v_h||_m\quad\forall v\in Vが得られる。

つまり||u-u_h||_m\le \frac{C}{\alpha}\inf_{v_h\in S_h}||u-v_h||_mが成り立つ。


Céaの補題はRitz-Galerkin法で得られた解がどの程度本当の解に近いのかを評価する上で重要である。\inf_{v_h\in S_h}||u-v_h||_mは離散空間上で表現できる中でもっとも正解に近い点の正解との距離を表しており、Ritz-Galerkin法はで得られる解と解析解からの距離は上の定理によって上限が定められている。定義からC/\alpha>1であるが、この値が小さいほど解の近似が良いことを示している。ロッキングなどが起こっているときはこの値が大きく、実際の正解と程遠いような離散解が得られる。また、C/\alphaがある程度小さい場合は、Ritz-Galerkin法の解が離散空間上で表現できるもっとも正解に近い解とある程度近いといえるので、解を表現できるように離散空間を設定することでRitz-Galerkin法の解を正解に近づけることができる。

一般的な解の一意存在性とその安定性

双線形形式a:U\times V\rightarrow \Reとする。ここで次を満たすように線形写像A:U\rightarrow V'を定める

a(u,v)=<Au,v>\quad\forall v\in V

このようにAを定義した場合はa(u,v)=<f,v>の解は単純にAu=fを解けばよい。

双線形形式aが次の条件を満たすとき、線形写像Aは同型写像である。(Aが同型写像であるとは、Aが全単写で有界かつ、A^{-1}も有界であるということ)

  1. 有界性
        あるC\in \Reが存在し、|a(u,v)|\le C||u||_U ||v||_V
  2. inf-sup条件
        ある\alpha \in\Reが存在し、\inf_{u\in U}\sup_{v\in V}\frac{a(u,v)}{||u||_U||v||_V}\ge\alpha\gt 0
  3. 全てのv\in Vに対して、あるu\in Uが存在し、
  4. a(u,v)\ne 0となる。

証明


Lax-Milgramの定理は上の特殊な場合で,UVが同じ空間の場合の解の一意存在性と安定性を示している。UVが同じ空間の場合で関数aが有界性と強圧性を持っている場合、上の定理のi,ii,iiiが成り立つことを確認しよう。

iの有界性については明らかである。また、
\sup_{v\in V}\frac{a(u,v)}{||v||}\ge\frac{a(u,u)}{||u||}\ge \alpha||u||
よって強圧性を持っていればiiのinf-sup条件は成り立っている。
またa(u,u)\ge\alpha||u||^2\gt0\quad \forall u\ne0であるからiiiの条件が成り立っている。以上でLax-Millgramの定理が成り立てば、上の定理が成り立つことがわかる。

inf-sup条件

上の3番目の条件がない場合について詳しく調べる。有界双線形形式a:U\times V\rightarrow \Reについて以下の命題は等しい

    1. ある正の定数\alphaが存在して次を満たす
      \inf_{u\in U}\sup_{v\in V}\frac{a(u,v)}{||u||_U||v||_V}\ge\alpha
    2. オペレータAU\rightarrow \hat{V}^0の同型写像で次を満たす
      ||Au||_V\ge \alpha||u||_U\quad\forall u\in U
    3. オペレターA'\hat{V}^{\bot}\rightarrow U'の同型写像で次を満たす
      ||A'v||_U\ge\alpha||v||_V\quad\forall v\in\hat{V}^{\bot}
空間U,V、共役空間U',V'の様子
\hat{V}=\{ v \in V;a(v,u)=0\quad\forall u\in U\}
\hat{V}^0=\{f\in V';<f,v>=0\quad\forall v\in \hat{V}\}
\hat{V}^{\bot}\hat{V}の直交補空間

証明

上から、iとiiは等しい。そこでiiiとiiが等しいことを示す。

iiが成り立ってるとするときにiiiが成り立つことを示す。VV'は共役空間なので、Rieszの表現定理からあるv\in \hat{V}^{\bot}に対して<f,w>=(v,w)\quad\forall w\in Vとなるようなf\in V'を選ぶことができる。v\in \hat{V}^{\bot}なので\forall\omega\in \hat{V}\subset Vに対して(v,w)=<f,w>=0である。\hat{V}^0の定義からf\in \hat{V}^0である。さて、iiが成り立っているとすると、写像A\hat{V}^0からUへの全単写であったから、あるAu_1=fとなるようなu_1\in Uが一意に存在する。

(v,w)=<f,w>=<Au,w>=a(u_1,w)\quad \forall w\in U

ここでiiが成り立っているので\alpha||u_1||_U\le||Au_1||_V=||g||_V=||v||_V

ここでw=vとおくと

||A'v||_U=\sup_{u\in U}\frac{<A'v,u>}{||u||_U}\\\qquad\qquad=\sup_{u\in U}\frac{a(u,v)}{||u||_U}\ge\frac{a(u_1,v)}{||u_1||_U}=\frac{(v,v)}{||u_1||_U}=\frac{||v||^2_V}{||u_1||_U}\ge\alpha||v||_V\quad\forall v\in \hat{V}^{\bot}

が成り立つ。これを用いるとオペレータA'が同型写像であるということが上の定理を使って示すことができる。

次にiiiが成り立っているとするときにiが成り立つことを示す。

UU'は共役空間なのでそのノルムは次のように書くことができる。

||u||_U=\sup_{g\in U'}{\frac{<g,u>}{||g||_U}\quad\forall u\in U

iiiが成り立つことから、A':\hat{V}^{\bot}\rightarrow U'が同型写像なので任意のg\in U'に対してA'v=gとなるようなv\in\hat{V}^{\bot}が一意に決まる。よって

||u||_U=\sup_{v\in \hat{V}^{\bot}}\frac{<A'v,u>}{||A'v||}=\sup_{v\in \hat{V}^{\bot}}\frac{a(v,u)}{||A'v||}\le\sup_{v\in \hat{V}^{\bot}}\frac{a(v,u)}{\alpha||v||_V}\quad\forall u\in U

よって

\alpha||u||_U\le\sup_{v\in \hat{V}^{\bot}}\frac{a(v,u)}{||v||_V}\le\sup_{v\in V}\frac{a(v,u)}{||v||_V}\quad\forall u\in U

これはiの条件である。よってiiiが成り立つときはiが成り立つ。

以上からi,ii,iiiは互いに等しい命題であることがわかる。


制約条件つき変分問題

MVをそれぞれHirbert空間とする。a,bをそれぞれ次のような有界双線形関数であるとする。

a:\quad V\times V\rightarrow \Re

b:\quad V\times M\rightarrow \Re

次のような関数J

J(v)=\frac{1}{2}a(v,v)-<f,v>

次の制約条件の下で解く

b(v,\mu)=<g,\mu>\quad \forall \mu\in M

このような制約条件つきの変分問題の代表的な解法としてLagrange未定乗数法が挙げられる。Lagrange未定乗数法を使うとこの問題は次のような関数の極値問題に対応づけることができる。

\cal{L}(v,\lambda)=J(v)+[b(v,\lambda)-<g,\lambda>]

明らかに(v,\lambda)が解である場合に次の関係を満たす(実際は最初の不等号は等号である)

\cal{L}(v,\mu)\le\cal{L}(v,\lambda)\le\cal{L}(u,\lambda)\quad\forall (u,\mu)\in V\times M

これがこのタイプの問題が鞍点型と呼ばれる所以である。

さて上の関数\cal{L}(u,\lambda)で極値をとる場合、u,\lambdaにおける変分が0であるから

\delta \cal{L}=a(u,\delta u)-<f,\delta u>+b(\delta u,\lambda)+b(v,\delta\lambda)-<g,\delta\lambda>=0\quad\forall\delta u\in V,\quad\forall \delta\lambda\in M

簡単のため\delta u=v\delta\lambda=\muと書くと、u,\lambda\cal{L}の極値であるということは以下を満たすことに等しい。

\{\begin{array}{l}a(u,v)+b(v,\lambda)\\b(u,\mu)\end{array}\begin{array}{l}=<f,v>\quad\forall v\in V\\=<g,\mu>\quad\forall \mu\in M\end{array}

さて上の方程式の解が一意に存在して安定であることを調べてみる。

制約条件つき変分問題の解の一意存在性と安定性について

次のような写像考えると

L:V\times M\rightarrow V'\times M'

この写像が同型写像(全単写、有界、逆写像が有界)になるためには以下のiとiiが必要十分条件である。

    1. 双線形形式a\hat{V}において楕円である。つまり、
      a(u,v)\le C||u||_V||v||_V\quad\forall u,v\in \hat{V}
      a(v,v)\ge\alpha||u||_V^2 \quad\quad\alpha>0
      ここで空間\hat{V}とは制約条件を満たすVの部分空間である。

    2. 有界双線形形式bがinf-sup条件を満たす
      \inf_{\mu\in M}\sup_{v\in V}\frac{b(v,\mu)}{||v||_V||\mu||_M}\ge \beta

証明

オペレータB:V\rightarrow M'を次のように定義する

b(v,\mu)=<Bv,\mu>\quad\forall \mu\in M

同様にオペレータB':M\rightarrow V'を次のように定義する。

b(v,\mu)=<v,B'\mu>\quad\forall v\in V

inf-sup条件より次がいえる。

オペレータB\hat{V}^{\bot}\rightarrow M'の同型写像であり、||Bv||_M\ge\beta||v||_Vが成り立つ

オペレータB'M\rightarrow \hat{V}^0の同型写像であり、||B'\mu||_V\ge\beta||\mu||_Mが成り立つ。

Bが同型写像であったから、g\in M'に対してあるv_0\in \hat{V}^{\bot}が唯一解として存在してBv_0=gとなる。そして\beta||v_0||_V\le||g||_Mが成り立つ。

w=u-u_0とおくと問題は次の方程式を解くのと等しくなる

\{\begin{array}{l}a(w,v)+b(v,\lambda)\\b(w,\mu)\end{array}\begin{array}{l}=<f,v>-a(u_0,v)\quad\forall v\in V\\=0\quad\forall \mu\in M\end{array}

J'(v)=\frac{1}{2}a(v,v)-<f,v>+a(u_0,v)とおくと、上の問題の解\omegav\in \hat{V}の中でJ(v)を最小化する解に等しい。aはv\in \hat{V}で楕円性を持っていたからLax-Milgramの定理よりJ(v)を最小にするような\omega\in\hat{V}が存在し、そのとき特徴化定理より

a(\omega,v)=<f,v>-a(u_0,v)\quad\forall v\in \hat{V}を満たす。

\omegaについてCauchy-Schwalzの定理より次が成り立つ。

\inf_{v\in V}a(\omega,v)\le a(\omega,\omega)=<f,\omega>-a(u_0,\omega)\le||f||_V||\omega||_V-C||u_0||_V||\omega||_V

a(\omega,\omega)\ge \alpha||\omega||^2

上の2つの式を合わせると次のことがいえる。

||\omega||_V\le \frac{1}{\alpha}(||f||_V+C||u_0||_V)

さらに

||u||_V\le ||u_0||_V+||\omega||_V\le||u_0||_V+\frac{1}{\alpha}(||f||_V+C||u_0||_V)\le\frac{1}{\alpha}||f||_V+\frac{1}{\beta}(1+\frac{C}{\alpha})||g||_M

さて、\omegaを評価することができたので、もう一つの解\lambdaを評価しよう。

\lambdaは次の方程式を満たす。

b(v,\lambda)=<f,v>-a(u_0+\omega,v)\quad\forall v\in V

上式よりb(v,\lambda)=<v,B'\lambda>=0\quad\forall v\in\hat{V}だから、B'\lambda\in \hat{V}^0となる。B'Mから\b{V}'への全単写だったから唯一\lambdaが存在する。

|<v,B'\lambda>|=|<f,v>-a(u_0+\omega,v)|\le|<f,v>|+|a(u,v)|\le||f||_V||v||_V+C||u||_V||v||_V

また||B'\lambda||_V\ge \beta||\lambda||_Mが成り立つことと、B'\lambda\in \hat{V}^0であることを利用して

|<v,B'\lambda>|=||v||_V||B'\lambda||_V\ge||v||_V\beta||\lambda||_Mだから、

||\lambda||_M\le|<f,v>|+|a(u,v)|\le\frac{1}{\beta}(||f||_V+C||u||_V)

まず、任意の(f,g)\in V'\times M'について、解(u,\lambda)は次のように評価される。

||u||\le \frac{1}{\alpha}||f||+\frac{1}{\beta}(1+\frac{C}{\alpha})||g||

||\lambda||\le \frac{1}{\beta}(1+\frac{C}{\alpha})||f||+\frac{1}{\beta}(1+\frac{C}{\alpha})\frac{C}{\beta}||g||

つまりLは全写であり、L^{-1}は有界

次にLの単写性を示す。Lは線形オペレータだからKer(L)=\{0\}となれば単写である。そこで(f,g)=(0,0)のときに解が(u,\lambda)=(0,0)となるかを調べる。この時解くべき方程式は次のとおり

\{\begin{array}{l}a(u,v)+b(v,\lambda)\\b(u,\mu)\end{array}\begin{array}{l}=0\quad\forall v\in V\\=0\quad\forall \mu\in M\end{array}

ここでvuを、\mu\lambdaを代入するとa(u,u)=0となり、aの楕円性からu=0となる。これからb(v,\lambda)=0\quad\forall v\in Vがいえる。inf-sup条件から、\sup_{v\in V}\frac{b(v,\lambda)}{||v||_V}\ge\beta||\lambda||_M>0であるから、b(v,\lambda)=0\quad\forall v\in Vとなるのは\lambda=0のときのみ。よって(u,\lambda)=(0,0)がいえる。よってLが単写であることがわかる。

Lの有界性はabの有界性から明らか。

以上から、上の条件が成り立つとき、Lが同型写像であることがわかる。

参考にしたもの

Links

東京大学新領域創成科学研究科、久田・杉浦研究室、渡邊先生の講義資料
http://www.sml.k.u-tokyo.ac.jp/members/nabe/
Galerkin法とその誤差解析:愛媛大学理学部数学科、土屋 卓也先生のページ
http://daisy.math.sci.ehime-u.ac.jp/users/tsuchiya/math/fem/galerkin/index.html
形状最適化入門5:偏微分方程式の境界値問題 畔上秀幸先生(名古屋大学)
http://www.az.cs.is.nagoya-u.ac.jp/jsiam/tutorial-shape-opt-5.pdf
熱方程式に対する有限要素法と誤差解析 齊藤 宣一先生(東京大学)
http://www.infsup.jp/saito/ln/heat06-1b.pdf

Books

有限要素法の数理 菊池文雄 著
有限要素法概説 菊池文雄 著
非線形有限要素法の基礎と応用 野口裕久 久田俊明 著
Finite Element Procedures Klaus-Jurgen Bathe 著
Finite Elements: Theory, Fast Solvers, and Applications in Solid Mechanics Dietrich Braess 著


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